クリーンルームの配管設計・施工
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記事更新日 2026年09月25日
クリーンルーム内に設置される配管は、単に各種流体(ガス・水・薬液など)を輸送するだけでなく、工場全体の清浄度維持、室内差圧の確保、コンタミネーション(汚染)の防止において極めて重要な役割を果たします。
設計や施工、材質選定を誤ると、配管からのパーティクル発生や気密漏れによる室圧の低下、製造ラインの停止といった重大なトラブルを引き起こすリスクがあります。本記事では、クリーンルームにおける配管の種類や材質の選定基準、壁・天井等の貫通部処理、施工・改修時の実務ポイントまで徹底的に解説します。
一般的な工場の配管設計では「流体の安定供給」と「構造強度」が主な検討課題となりますが、クリーンルーム内の配管においては、さらに厳しい環境管理要件が課されます。
配管外観からのホコリの発生(発塵)はもちろんのこと、配管内部からの溶出・微粒子発生、接合部や貫通部からの微小な空気漏れ(エアリーク)は、室内の清浄度クラスや差圧バランスを乱す原因となります。
配管の設計に取りかかる際は、まず以下の要求仕様を明確にしておくことが不可欠です。
クリーンルーム内で用いられる配管は、輸送する流体や目的に応じて主に以下のカテゴリーに分類されます。
| 配管区分 | 主な用途 | 設計・施工における重点ポイント |
|---|---|---|
| 純水・超純水配管 | ウェーハ洗浄、薬品希釈、精密洗浄 | 金属イオンや有機物の溶出防止、滞留(デッドレグ)の排除、平滑な内面品質 |
| 高純度・特殊ガス配管 | 半導体・電子部品プロセス用ガス、パージ用窒素 | 内面からの発塵防止、微細なリーク防止、施工時のパージ・パティキュレート管理 |
| 排水・薬液排水配管 | 製造プロセス排水、酸・アルカリ排水、空調ドレン | 耐薬品性、配管の勾配維持、腐食・ガス逆流の防止、液溜まり防止 |
| 圧縮空気(計装エア)・真空配管 | 駆動機器用エア、自動搬送、真空吸着・排気 | 油分・水分・粒子の除去、露点管理、接続部の耐圧・気密性 |
| 空調冷温水・加湿給水配管 | 空調機(AHU)、ファンコイル、加湿器への給水 | 結露防止のための保温工事、漏水リスクの排除、点検スペースの確保 |
流体の特性や要求される清浄度に応じて、配管材質および内面仕上げ仕様を適切に選択する必要があります。
金属配管として広く用いられるのがステンレス鋼(SUS)です。一般ユーティリティ用途ではコストと耐食性のバランスに優れたSUS304が使われますが、純水系や耐食性をより重視する環境ではモリブデンを添加したSUS316が好まれます。
さらに、溶接部周辺の粒界腐食リスクを低減し、超高純度ラインや衛生性が求められる用途には炭素量を抑えたSUS316Lが指定されます。
高純度ガスや微細化が進む半導体製造プロセスでは、ステンレス管の「内面仕上げ」が品質を極めて大きく左右します。
強酸・強アルカリなどの強腐食性薬液や、金属イオンの溶出を徹底的に嫌うプロセスでは樹脂材料が選定されます。汎用的な排水等には塩ビ(PVC)が用いられ、高度な耐薬品性と耐熱性が求められるラインにはPVDF(フッ化ポリビニリデン)やPTFE・PFAフッ素樹脂が適用されます。
配管径を決める際は、要求される流量に加えて適正な「流速」を計算することが重要です。流速が速すぎると管内摩擦による発塵や静電気の発生、圧力損失の増大を招きます。一方で流速が遅すぎると、流体の滞留や微生物・微粒子の沈着の原因となります。
純水や薬液配管では、流体が流れずに滞留する分岐部(デッドレグ)を最小限に抑える構造が必要です。枝管の長さは本管径の配率を意識して極力短く設計し、配管全体の落差や勾配を考慮して液残りが起きないレイアウトを構築します。
クリーンルーム室内に配置する配管架台や支持金具(ハンガー・サドル)は、表面からの錆や発塵を防ぐため、ステンレス製やアルマイト処理品を選択します。また、拭き掃除がしやすいシンプルな形状とし、バルブの操作や将来のフィルター交換に支障をきたさない作業スペースを確保します。
クリーンルームの構造上、壁パネル、天井、床を配管が貫通する部分は、設計・施工において最も漏えいトラブルが起きやすい箇所の一つです。
配管貫通部にわずかな隙間(エアリーク)が存在すると、クリーンルーム内の正圧維持が難しくなり、隣接する低清浄度エリアや天井裏からコンタミネーションが流入する原因になります。
貫通部の処理にあたっては、単にシリコンシーリング材を充填するだけでなく、以下の仕様を検討します。
どんなに高品質な配管資材を選定しても、施工時の管理が不適切であれば配管内部や施工現場が汚染されてしまいます。
配管資材は工場出荷時から両端にキャップが装着され、二重袋などでクリーン梱包された状態で購入・保管されます。クリーンルーム内へ搬入する直前まで保護キャップを外さず、開放時間を最小限に留める運用を徹底します。
管材の切断作業で生じる金属粉や、TIG溶接時の酸化(溶接焼け・ヒューム)は重大な汚染源となります。高純度配管の接合には自動パイプ溶接機を用い、管内に高純度アルゴンガスを通流(バックシールド)させながら内面酸化を防ぐ施工が標準的です。
配管組み上げ後は、超純水や高純度窒素ガスを用いた高圧フラッシング(吹き飛ばし清掃)を行い、残留微粒子を完全に追い出します。その後、規定圧力を加重して圧力降下がないかを確認する耐圧試験およびヘリウムリークテスト等の気密確認を実施します。
稼働中のクリーンルーム内で後付け配管工事や改修を行う場合、既存の製造ラインへの二次汚染防止が最優先課題となります。
工事対象領域をビニールカーテンや仮設パネルで完全に仕切り、工事区画内を陰圧(負圧)に維持することで、切断粉や作業者の発塵が周囲の生産エリアへ漏れ出すのを防ぎます。
天井裏(インタースティシャルスペース)や配管ピットは、既存のダクト、電線ラック、スプリンクラーなどが複雑に交差しています。あらかじめ現地調査を実施し、配管ルートの干渉や重量負荷の安全性を事前に確認しておくことが円滑な改修施工に繋がります。
クリーンルームの配管設計・施工は、単なる流体輸送にとどまらず、工場全体の清浄度維持、室内差圧の防衛、そして製造品質を守るための基盤技術です。
流体の用途に応じた管材(SUS、BA/EP管、樹脂)の選定をはじめ、気密性を損なわない貫通部シール処理、そして施工時の発塵・汚染対策を一体となって管理することが成功の鍵となります。
自社ラインの要求水準を明確にし、豊富な実績を持つ専門メーカーや設備施工業者と連携しながら、確実性の高い配管設計を進めていきましょう。

半導体製造は、日本の地域経済の活性化に大きく貢献する重要な産業です。しかし近年では、原材料価格の高騰や光熱費の増加、さらに円安の影響により、各企業の努力だけでは乗り越えられない厳しい状況が続いています。
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