クリーンルームのクラス(清浄度)とは?
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記事更新日 2026年07月23日
クリーンルームの導入や維持管理において、自社の製造・研究工程に合わせた適切な「清浄度クラス」の設定は、製品の品質向上と膨大な設備コストの最適化を両立させるための鍵となります。
クリーンルームの規格には、国際標準である「ISOクラス」や、長年現場で親しまれてきた「FED規格(米国連邦規格)」が存在し、それぞれの特徴や換算方法、測定・維持管理のノウハウを正確に理解しておくことが重要です。
本ページでは、クリーンルームのクラスの基礎知識から規格の違い、現場目線での日常感覚との比較、業界別の推奨クラス、粒子測定方法(パーティクルカウンター)、維持のための4原則、コスト傾向まで詳しく解説します。
クリーンルームの「クラス(清浄度)」とは、一定の空気体積の中に存在する微粒子(ホコリ、塵、微生物など)の数や大きさを基準に、空間の清潔さを等級分けした指標です。
数字が小さくなるほど空気中の微粒子が少ない「高清浄な環境」であることを意味します。
「クラス」と言われてもピンとこないかもしれませんが、私たちが日常過ごしている環境と比較するとその凄さが分かります。
一般的なオフィスや住宅の空気中には、1m³あたり数千万〜数億個もの微粒子(0.5μm以上)が浮遊しています。病院の「高度手術室」であっても、ISOクラス7(旧クラス10,000)程度です。
一方で、精密電子部品や医薬品の製造で使われる「ISOクラス5(旧クラス100)」は、微粒子を1m³あたり3,520個以下にまで抑え込んだ環境です。つまり、一般的な部屋の数万分の1以下という、自然界ではあり得ない究極の清浄空間を作り出していることになります。
現在、クリーンルームのクラス表記には「ISO規格(ISO 14644-1 / JIS B 9920)」と「FED規格(アメリカ連邦規格 FED-STD-209D)」の2つが存在します。
ISO規格は世界共通の国際基準であり、日本のJIS規格(JIS B 9920)もこれに準拠しています。
1立方メートル(1m³)の空気中に含まれる粒径0.1μm以上の微粒子数を基準として、「ISOクラス1」から「ISOクラス9」までの9段階に分類されています。
| ISOクラス/粒径 | 0.1μm | 0.2μm | 0.3μm | 0.5μm | 1.0μm | 5.0μm |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ISOクラス1 | 10 | - | - | - | - | - |
| ISOクラス2 | 100 | 24 | 10 | - | - | - |
| ISOクラス3 | 1,000 | 23,735 | 102 | 35 | - | - |
| ISOクラス4 | 10,000 | 2,370 | 1,020 | 352 | 83 | - |
| ISOクラス5 | 100,000 | 23,700 | 10,200 | 3,520 | 832 | - |
| ISOクラス6 | 1,000,000 | 237,000 | 102,000 | 35,200 | 8,320 | 293 |
| ISOクラス7 | - | - | - | 352,000 | 83,200 | 2,930 |
| ISOクラス8 | - | - | - | 3,520,000 | 832,000 | 29,300 |
| ISOクラス9 | - | - | - | 35,200,000 | 8,320,000 | 293,000 |
FED規格は、1立方フィート(約28.3L)の空気中に含まれる「0.5μm以上」の微粒子数をもとに「クラス100」「クラス10,000」と分類する基準です。
| クラス/粒径 | 0.1μm | 0.2μm | 0.3μm | 0.5μm | 1.0μm | 5.0μm |
|---|---|---|---|---|---|---|
| クラス1 | 10 | - | - | - | - | - |
| クラス10 | 100 | 24 | 10 | - | - | - |
| クラス100 | 1,000 | 23,735 | 102 | 35 | - | - |
| クラス1,000 | 10,000 | 2,370 | 1,020 | 352 | 83 | - |
| クラス10,000 | 100,000 | 23,700 | 10,200 | 3,520 | 832 | - |
| クラス100,000 | 1,000,000 | 237,000 | 102,000 | 35,200 | 8,320 | 293 |
FED規格は2001年に正式廃止されISO規格へ一本化されました。しかし、日本の現場や図面では今なお「100クラス」「万クラス」という言葉が飛び交っています。これは「1立方フィートあたりの粒子数」という直感的なわかりやすさが現場作業員やエンジニアに長年定着しているためです。メーカーとの仕様打ち合わせでは「ISOクラス表記」と「旧FED表記」の両方を把握しておくのがスムーズです。
ISO規格とFED規格は体積単位(1m³と1ft³)が異なるため単純計算はできませんが、実務上は以下のように対応づけて運用されています。
| ISO規格(ISOクラス) | アメリカ連邦規格(FED規格) |
|---|---|
| ISOクラス3 | クラス1 |
| ISOクラス4 | クラス10 |
| ISOクラス5 | クラス100 |
| ISOクラス6 | クラス1,000 |
| ISOクラス7 | クラス10,000 |
| ISOクラス8 | クラス100,000 |
規格表を見る際、ただ「粒子数」を見るだけでなく「自社の工程でどのサイズのゴミ(粒径)が不良原因になるか」を特定することが重要です。例えば、0.1μmの超微細な塵が命取りになる半導体工程と、5.0μm以上の粗大粒子や浮遊菌を防ぎたい食品・医薬品工程では、同じクラスであっても導入すべきフィルター(HEPAかULPAか)や風量管理の設計が全く異なります。
各産業分野で求められる代表的な清浄度クラスの目安は以下の通りです。
| 分野・業界 | 主な作業・工程内容 | 推奨クラス(ISO / FED) |
|---|---|---|
| 半導体・電子部品 | フォトリソグラフィ、超微細加工、ウエハ検査 | ISOクラス1〜5(クラス1〜100) |
| 医薬品・バイオ技術 | 無菌製薬、無菌充填、細胞培養(GMP管理) | ISOクラス5〜7(クラス100〜10,000) |
| 光学機器・精密機械 | レンズ研磨・組立て、精密センサー実装 | ISOクラス5〜7(クラス100〜10,000) |
| 食品・化粧品製造 | 無菌包装、充填エリア、微生物汚染防止 | ISOクラス7〜8(クラス10,000〜100,000) |
| 高機能印刷・塗工 | 高精細フィルム塗工、プラスチック精密成形 | ISOクラス7〜8(クラス10,000〜100,000) |
クリーンルームが目標とする「ISOクラス」に達しているかを客観的に証明・測定するためには、専門の機器と正しい手順が必要です。
測定には「光散乱式パーティクルカウンター」を使用します。吸引した空気中の微粒子にレーザー光を照射し、粒子から発せられる散乱光の強度から「微粒子のサイズ(粒径)」を、散乱の回数から「個数」をリアルタイムで計測します。
室内の床面積に応じて、JIS B 9920(ISO 14644-1)の数式に基づいた「最小測定ポイント数」を算出します。グリッド状に均等配置した各ポイントで規定の空気量をサンプリングし、各点の平均値および信頼限界値(UCL)が目標クラスの上限値を下回れば「適格」と認定されます。
性能評価(PQ/OQ等)を行う際、どの状態での清浄度を担保するのかを事前に取り決めておく必要があります。
| 稼働状態 | 状態の定義 |
|---|---|
| 1. 施工直後(As-built) | 建屋・空調設備が完成し、製造設備も作業者も存在しない「空っぽ」の状態 |
| 2. 非作業時(At-rest) | 設備機器は配置・稼働しているが、作業者が入室していない状態 |
| 3. 稼働時(Operational) | 実際の製品製造ラインが動いており、作業員も定常通り作業を行っている状態 |
人は呼吸や動くだけで大量の微粒子(皮脂や服の繊維など)を発塵させるため、「非作業時」と「稼働時」ではクラスの数値が大きく変動するのが一般的です。
どんなに高性能なフィルターを設置しても、現場の運用ルールが疎かであれば清浄度クラスは一瞬で崩壊します。管理現場では「クリーンルームの4原則」が徹底されます。
外部からの微粒子侵入を防ぎます。入室時のエアシャワーの使用、粘着マットでの靴底清掃、持ち込み資材のパスボックス経由でのアルコール拭き上げなどを徹底します。
室内での発塵を最小限に抑えます。発塵を抑える専用クリーンスーツ・手袋の着用、無用な室内でのすばやい動作(風を起こす行動)の禁止、低発塵性クリーンペーパーの使用などを行います。
微粒子が滞留・堆積しない構造・清掃を行います。部屋のコーナー部を丸みのある構造(Rカマボコ)に仕上げ、壁際や設備裏の死角を定期的にクリーンルーム専用ワイパーや掃除機で清掃します。
発生した微粒子を留めず速やかに排出します。適切な換気回数(風量)を確保し、気流(天井給気・床下排気など)を最適化して部屋の外へスムーズに押し出します。
クリーンルームの設計において最大の課題となるのが、「クラスを1段階上げるごとにコストが跳ね上がる」という点です。
| ISOクラス | 対応気流方式 | 換気回数目安(回/h) | 建設費用・設備コスト | 電気代(ランニングコスト) |
|---|---|---|---|---|
| ISOクラス1〜3 | 一方向流(層流) | 300〜600以上 | 非常に高価(数億円規模) | 極めて高い(大風量ファン連続稼働) |
| ISOクラス4〜5 | 一方向流 / 混合流 | 60〜300程度 | 高価 | 高い |
| ISOクラス6〜7 | 非一方向流(乱流) | 20〜60程度 | 標準的 | 中程度 |
| ISOクラス8〜9 | 非一方向流(乱流) | 10〜20程度 | 安価 | 低い |
特にISOクラス1〜5レベルを目指す場合、天井全面にファンフィルターユニット(FFU)を配置して莫大な風量を24時間送り続ける必要があるため、工場全体の消費電力の3割以上をクリーンルーム空調が占めるケースも少なくありません。
クリーンルームの導入や改修で費用対効果を極限まで高めるための戦略的なアドバイスです。
「とりあえず綺麗にしておこう」と過剰なISOクラスを設定すると、イニシャルコストだけでなく毎月の電気代が会社経営を圧迫します。製品の歩留まり(不良率)と許容できるパーティクルサイズを科学的に検証し、真に必要な最小限のクラスを選定しましょう。
部屋全体を高いクラスにする「大空間クリーン化」は膨大なコストがかかります。部屋自体はISOクラス7〜8(クラス10,000程度)に抑え、真にクリーンさが必要な手元作業や充填ラインのみを「オープンクリーンベンチ」や「クリーンブース」で局所的にISOクラス1〜5化する手法(ゾーン制御)が、現代の省エネ時代の最適解です。
クリーンルームは建設して完了ではなく、定期的な粒子測定(JIS B 9920 / ISO 14644準拠)による適格性評価とHEPAフィルター交換などのメンテナンスが必須です。あらかじめ年間の維持管理費を見込んだ上で、長期的な運用計画を立てましょう。

半導体製造は、日本の地域経済の活性化に大きく貢献する重要な産業です。しかし近年では、原材料価格の高騰や光熱費の増加、さらに円安の影響により、各企業の努力だけでは乗り越えられない厳しい状況が続いています。
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